Jリーグ監督や世界各地のプロコーチも取得している、 FAインターナショナルコーチングライセンスを知っていますか?
FAコーチングライセンスは、本マガジンでも紹介しましたが、インターナショナルという名がつくライセンス講習では、いったいどのような内容でコーチング講習が行われているのでしょうか?
昨年の夏、サッカーの母国でインターナショナルライセンス取得をした植野トオルさんにFAインターナショナルコーチングライセンスについて詳しく綴ってもらいました。
第1回はこちらから → インターナショナルコーチングライセンスとは?
Jリーグ監督も取得しているFAインターナショナルライセンスとは?PART2
こんにちは、トオルです!FAインターナショナルライセンスとは?PART2です!PART2では、講習の前半(2日目〜7日目)に学んだ内容について書いていきたいと思います。
FAインターナショナルコーチングライセンスの講習の流れと内容
最初の1週間は主にFA Level 2の内容を学びます。
通常のLevel 2は取得に半年程かかりますが、このコースでは1週間でほぼ同じ内容を一気に行います!今回は、その一週間で僕自身が感じたことを中心に紹介します。
スケジュールはこんな感じでした。
08:30 -11:00 講義
11:15 -12:45 実技
14:00 -15:30 講義
15:45 -17:15 実技
19:30 -21:00 講義
ぎっしりです!
講義、実技、講義、実技の繰り返しです。
主な内容としては…
•ボールコントロール(ターンやトラップ)
•パス、ドリブルなどの基本技術習得
•オフェンス時のサポートに関するトレーニング
•数的不利な状況でのディフェンス
•ゴールキーピング
•フィニッシュまでのトレーニング などなど。
講義の様子
コースの流れは、1 ) 講義の時間にそれぞれのセッションに関する重要なポイントを学び、2 )その後の実技で僕ら受講生が選手役となり 3)インストラクターのセッションを受ける、といったものでした。
日本の指導者講習会との違いは【コミュニケーションの取り方】
1週間目に学ぶ内容は日本でC級ライセンスを取得した時と似ているものが多く、正直それほど難しいとは感じませんでした。
ただ、日本との大きな違いとしては感じたものは”コミュニケーションの取り方”です。
インストラクター主導でセッションが進むわけではなく、選手たちに質問を投げかけ、その返答と会話のやりとりをうまく使いながらテーマの重要な部分に迫っていきました。
「はいorいいえ」だけのクローズド(閉じた)会話方法ではなく、オープンクエッションを多く使い(5w1h=when where who what why how)、答えの幅をたもっていました。
また、キーワードをボード書き込むなど、視覚をうまく使いトレーニング全体のイメージをしっかりと掴ませていました。
トレーニング中の声掛けがとにかくポジティブ
講師の方がデモンストレーションを見せてくれるのですが、選手たちのモチベーションを上げることが非常に上手だなぁと、選手役をしているときに感じました。
単純に褒めるのではなく、選手が行った細かいプレーの良いところをしっかりと見ている声掛けなので、プレーする側としては”ちゃんと見ていてくれている、よしもっと頑張ろう!”となることが多かったです。
あくまで個人的な意見ですが、日本では選手の技術を伸ばそうとするあまりに、良い部分にはあまり触れずに改善すべき点ばかりにフォーカスをあてるという指導が多い気がします。
実際、僕もそのような指導が多かったのではないかと振り返るとそう思います。
ディスカス!ディスカス!
講義では受講者同士でのディスカッションがとても多かった!なにをする上でも、まずはディスカッションをしてから、というパターンで講義は進んでいきます。
受講生の多くはしっかりと自分の意見を持っていて、それをきちっと伝える力がありました。意見を出し合うことで、ディスカッションは非常に盛り上がります。残念ながらこのあたりの能力は、僕も含め日本人には足りていない力ですし、海外で戦うために必要不可欠の能力であると感じました。
実技試験(FA LEVEL 2)
6日目にはそれまで学んできたことを今度は僕らが実際に指導する実技試験があります!
試験前日にテーマとグループを発表され、それから同じセッションの仲間とプランを考えます!
講習で使うノート!講義の内容を書き留めたり、実技試験のためのセッションプランを書いたりします。
この試験では、2人or3人と協力しながら、一つのセッションを行う形式で”Training 1″ ,” Training 2″ , “Small side game”の3つを行います。
僕たちのグループに与えられたテーマは”Develop Finishing”。
パプアニューギニア出身のTaku、フィリピン出身のAkiと一緒にセッションをやりました。
実際に立てたセッションプラン(練習メニュー)の概要はこんな感じです!(字が汚いのと見にくいのはご了承ください。。。)
自分の担当は”Small side game”=スモールサイドゲームといい、いわゆるミニゲームです。(以下”SSG”と省略させてもらいます。)
SSGの前に”Training 1″ ,” Training 2″があって僕の番になるので、それまでのセッションの中で何を中心に指導し、どのようなものをトレーニングに求めていくか、を他の二人と意見を織り交ぜながらプランを作る必要がありました。
ですがここで色々と問題が…
一緒のグループになった二人は非常にのんびりした性格で、夕食後に集まってプランを練るはずがなかなか時間に来ない。。
気になって部屋に行くと、なんとプレミアリーグを観ている!!
仕方ないので僕も一緒に観戦しながら、ちょいちょいプランの話を進めていきました。
最終的には僕がおおまかな全体プランを決め、あとはぞれぞれコーチングポイントを共有してセッションを考えることでミーティングは終了。
そして、いざ実技試験へ!!!
僕らのテーマが”Develop Finishing”ということでセッションの順番は最後でした。
このセッションは指導を受けない受講生、インストラクターがプレーします。ですが、またここで問題が。。。
それまでいくつものセッションを終えてきているため皆、相当お疲れモード。動きにキレがなくなっていました。
でも、指導ポイントやプレーの質にはこだわらなければいけません!
なので、プレーヤーのモチベーションをいかに上げつつ行うか、が大きなポイントでした。
英語があまり得意でない僕には技術指導よりも難しい課題でしたが、僕のSSGは非常に盛り上がり、僕らの指導をチェックしていたインストラクターには”Well done!”とお褒めの言葉を頂けました。
実際の評価シートはこんな感じ。(チェックが入っている項目はパスしたということです。)
プレミアリーグのユースとトップの試合見学
7日目はプレミアリーグに所属する”Aston Villa”のトレーニング施設とユースの試合見学、そしてホームスタジアムにてリーグ戦の観戦というプランでした!
“Aston Villa”この日は朝からバスに乗り、Aston Villaのトレーニング施設へ!
これは、スタジアムではなく練習場です
午前中はユースが併設されているグラウンドにてリーグ戦を行っているので見学。プレミアリーグの下部組織だけあり、レベルが非常に高い試合でした!
そんな中、驚いたのはこれ!
トイレの男性の足がボールの上に!
さすが、フットボールの母国!
現在イングランド代表のセンターバック、CAHILL選手のユニフォーム!
彼はAston Villaの下部組織出身のため、実際に着たものを寄付されたそうです。
このようなユニフォームはグラウンドに出るまでの廊下にたくさん展示してあり、トッププロを目指す下部組織の選手たちのモチベーションをあげるためのものだそうです。
そして、午後はスタジアムに移動!
そしてプレミアリーグ観戦!!!
この日のカードは”Aston Villa vs Newcastle “
僕ら、受講生は当然Aston Villa 側の席でしたが、なんとメインのインストラクターのTonyはNewcastle 出身のため、一人だけアウェー席で観戦!やはり、地元のクラブに対する思いはすごい!
結果はNewcastleの勝利!Tonyは大喜びでした!
観客の熱のこもった応援、そしてなんといっても縦に速いゲーム展開はとても迫力があり、これぞプレミアリーグといった経験ができました!
このような施設見学やプレミアリーグ観戦はFA LEVEL 2ではないため、このプログラムの魅力のひとつかと思います。指導法以外でも、イングランドのフットボールに触れる機会が多くあることがこのライセンスのメリットでもあるかと。
では、このあたりでPART 2は終わりです。長くなりましたが、お付き合いありがとうございました。
次回、PART 3では残りの日程(8日目〜16日目)について書いていきたいと思います!
TORU
インターナショナルフットボールコーチングライセンスに関する質問(費用、滞在期間、語学学校などなど)などは、下記リンクよりお問い合わせ可能です。現地在住のFootball@UKスタッフが対応いたします。
著者プロフィール
- 2013年の夏にFAインターナショナルコーチングライセンス取得。日本人離れした長身(約190cm)。日本のコーチングライセンス(GKを含めて)、教育免許をもつため、英国でのコーチング経験をつづり、日英の育成方針の違いも紹介していきます。