「もし私がイングランドでプレーするなら、どんなチームがあるんだろう?」
サッカー留学先に「どこの国を選ぶのか」はとても重要なポイントですが、同じくらい大切なのが、「どんなチームでプレイできるのか」ということではないでしょうか。
イングランド女子サッカー留学希望者が練習参加できるチームのひとつに、西ロンドンのアクトンを拠点とするActonians Women’s Football Club(以下、アクトニアンズ)があります。
今回の記事では、アクトニアンズのChairpersonであるLinda Lukes Fox (以下、リンダさん)さんに、チームについて、また女子サッカー全体についてのお話を伺いました。
異国の地で出会ったチームに捧げた半生

ーリンダさんのこれまでの経歴を教えてください。
「生まれはスウェーデンで、サッカーをはじめたのは9歳の頃です。
23歳のときに、英語の勉強のためにロンドンに来ました。都会での暮らしに憧れていたことも、ロンドンに住んでみたいと思った理由の一つです。
5カ月ほどの滞在でしたが、その間に今の夫と出会いました。一度スウェーデンに帰国した後、またロンドンに戻って大学に進学。それ以来ずっとロンドンに住んでいます。
ロンドンにはサッカーをしに来たわけではありませんでした。知り合いのいない異国の地で友だちを作るには、サッカーチームに参加するのが一番良い方法だと思い、チームを探しました。
最初に参加したチームは数カ月で辞めてしまいましたが、その次に出会ったのがアクトニアンズです。
私が加入した頃はプレーを楽しむことがメインで、正直なところあまりレベルは高くありませんでした。初めのうちはそれでもよかったのですが、だんだんと物足りなさを感じるようになったんです。
しばらくしてFirstとSecondの2チームにわかれることになり、私はFirstチームになりました。
少しずつチームのレベルが上がり、現在はメンバーも増えて、First(1軍)、Reserve(2軍)、Third(3軍)の3チームに分かれました。1軍チームはイングランド女子4部であるWNL (The FA Women’s National League)の Division One South Eastに所属しています。
また、女子サッカー人気の高まりとともに、2010年からガールズチームも立ち上げました。現在は6チーム、約150人の選手がいます。
私自身、はじめのうちは選手としてプレーしていましたが、今はクラブを運営する側に回り、3部チームのコーチも務めています。
アクトニアンズに加入してから30年近くが経ち、気づけば人生の半分以上をチームに捧げています。とても充実した時間を過ごしてきました」
リーグ昇格を目標に

ーアクトニアンズとしての今後の目標はありますか?
「プロ1部リーグであるWSL(Women’s Super League)や2部のWC(Women’s Championship)まで昇格することは非常に厳しいです。
けれど、一つ上のディビジョン(WNL Premiour Southern Division)に昇格する実力はあると思っているので、そこを目指したい。
もっと上に行くためには、クラブの規模としても資金的にもハードルが高いのが実情で、ローカルチームであることの難しさを感じています。
また、ガールズチームで成長した選手がトップチームの選手として活躍してくれるのが理想的ですが、そう簡単なことではありません。トップチームで活躍できるレベルまで育成することが難しい、ということだけではないのです。
多くの選手や保護者は、レベルが上がってくると大きなクラブへの移籍を考えます。そのため、良い選手が流出してしまうことが実際問題として起きています。
たとえU17まで継続した選手がいても、大学進学を機にロンドン郊外に出て行ってしまうことも多いんです。大学卒業後に戻ってきて再加入してくれるケースも、まれにありますが。
いずれにせよ、ガールズチームからトップチームへと昇格する選手はあまり多くないのが現状。トライアウトを受けて合格した選手がトップチームに加入するケースがほとんどです。
私たちとしては、ガールズからの所属選手が残りたくなるような、より魅力的な環境を提供できるような努力が必要ですね」
日本人選手の学ぼうとする姿勢
ー日本人選手についての印象を教えてください。
「アクトニアンズには、これまでも毎年1・2人の日本人選手が来ていました。彼女たちは努力家で、練習中もコーチの話に真剣に耳を傾けてくれます。いつも熱心に練習に取り組んでいて、学ぼうとする姿勢が素晴らしかった。
みんなフレンドリーで、英語に自信のなかった選手でも、いつの間にかチームに馴染んでメンバーと打ち解けていましたね」
サッカー、だけじゃない

ー日本人選手がアクトニアンズに参加することで、どのような経験を得られるでしょうか?
「アクトニアンズには1軍から3軍まで3チームがあり、自分のレベルに合ったチームを選べます。
1軍の対戦相手はレベルが高く、チャレンジングな環境でプレーできます。ロンドン郊外に遠征に行くことも多く、いろんな場所に行く機会を得られることも、とても良い経験になるでしょう。
日本から来る選手は、サッカーはもちろん、英語の勉強をしたい人も多いですよね。チームとして、サッカー環境だけでなく、できるだけ多くの成長の機会を提供できるようにしたいです。
選手自身も、積極的にいろんな練習に参加したり、練習時間以外でもチームメイトと関わるように意識すれば、さらに多くのことを学べると思います。
ちなみに、18歳未満の場合、選手登録するために保護者の承認なども必要になるため、通常よりも手続きに時間がかかります。場合によっては一カ月以上かかることもあります。
選手としてリーグ戦の試合に出場したいと考えているならば、渡英前から手続きを始めることをお勧めします」
「私もサッカーがしたい!」イングランド女子サッカー人気の高まり
ーイングランドで女子サッカー人気が高まっているのはなぜだと思いますか?
「2011年からのプロリーグ本格化の影響が大きいと思います。それまでにもプロリーグはありましたが、その頃から本格的に女子リーグに投資しはじめるようになりました。
またイングランドサッカー協会(FA)は、2017年に「The Gameplan for Growth」、2020年には「Inspiring Positive Change」という女子サッカー成長戦略を掲げています。その結果、女子サッカー人口は2倍になり、イングランド女子代表チームはEUROでの2大会連続優勝とW杯準優勝という成果を残しました。その戦略を主導したスー・キャンベル女史は、本当に素晴らしい仕事をしたと思います。
また、前回(2022年)のEUROでイングランド代表が優勝して以降、それまでプレー経験のない大人の女性がサッカーを始めるケースが多いように感じています。実際、18歳以上の女性向けのレクリエーションチームの数は増えていますから。
今の小中学生は学校のPE(体育)などでサッカーをする機会が多くありますが、30・40代より上の人たちはそうした機会が少なかったんです。けれど、EUROでイングランド女子代表が活躍する姿を見て「私もサッカーをやりたい!」と感じた人が多いのではないでしょうか。それはとても良いことですよね」
日本女子サッカーには起爆剤が必要
ー日本における女子サッカーの発展についてはどのようにお考えでしょうか?
「日本には素晴らしい選手がたくさんいるし、日本代表チームは強い。
イングランドのようにプロリーグがもっと発展すれば、日本での女子サッカー人気も高まるでしょう。
EURO2025の開催地であったスイスは小さな国ですが、今回のEUROの開催では国を挙げて盛り上がっていました。
日本でも近い将来、ワールドカップなどの大きな大会が開催されれば、よい起爆剤になると思います」
アクトニアンズ所属日本人選手からのメッセージ
最後に、フットボールサムライアカデミーのガールズチームでコーチを務める傍ら、選手としてアクトニアンズに所属している石井茉莉絵(まりえ)からのメッセージをお届けします。

「昨シーズン(2024/2025)、football@UKを通じてアクトニアンズに加入し、今年で2シーズン目を迎えました。
選手としてのプレーの幅を広げながら、日本とは全く違うイングランドサッカーを体感する毎日です。
現在、チームにもリーグにも日本人選手は私だけ。そのことに寂しさを感じることもありますが、これを英語上達のチャンスと捉えています。練習や試合以外の時間も、チームメイトとBBQをしたり、パブにサッカーを見に行ったりして交流を深めています。そのお陰で、何でも話せる友達もでき、英語もかなり上達しました。
Lindaさんをはじめ、チームのみんなは日本人である私を歓迎して受け入れてくれました。アクトニアンズに加入したことで、サッカーだけでなく充実したイギリス生活を過ごしています。
私はfootball UKを通じてアクトニアンズに出会いましたが、今度は私自身が、これからイングランドサッカーに挑戦する選手とアクトニアンズを繋ぐ架け橋になりたいと考えています。今しか、ロンドンでしか経験できない女子サッカー生活を一緒に楽しみましょう!お待ちしています!」

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