Jリーグ監督や世界各地のプロコーチも取得している、 FAインターナショナルコーチングライセンスを知っていますか?
FAコーチングライセンスは、本マガジンでも紹介しましたが、インターナショナルという名がつくライセンス講習では、いったいどのような内容でコーチング講習が行われているのでしょうか?
昨年の夏、サッカーの母国でインターナショナルライセンス取得をした植野トオルさんにFAインターナショナルコーチングライセンスについて詳しく綴ってもらいました。
自身の経験をもとに書いてくれたシリーズも今回で最終回です。
第1回はこちらから → インターナショナルコーチングライセンスとは?
第2回はこちらから → FAレベル2の内容はむずかしい?
講習はLEVEL2からUEFA B ライセンスの内容へ
FA LEVEL2の内容終了後はUEFA Bライセンスの内容を学びます。
LEVEL 2とUEFA Bライセンスの講習での内容の大きな違いは以下の2点。
・5vs5から8vs8以上へと指導の対象人数の変更
・基本技術指導中心からより戦術・実践的な指導
見にくいですが、目次です。より細かい内容でポジションや様々な状況をイメージしてテーマが作られています。
講習でのスケジュールは大きな変化もなく、この目次の中からいくつかテーマが絞られ、受講生が選手役となり、インストラクターの指導を学びます。
GKセッションでは
1)クロスへの対応、
2)クロスからの攻撃を中心としたファンクショントレーニングを行いました。このファンクショントレーニングがLEVEL 2との大きな違いです。
僕自身、GK経験者なものでこのセッションはメインでやらせてもらいましたがやはり褒めるポイントがうまい!
ミスをした選手がいても、そこから凹ませずに、プレーヤーをのせるのが上手でした!なので気持ちを切り替えてまた次にチャレンジしよう!と、どんどん意欲が湧いていきます。
どのような声を掛けて選手たちのやる気を伸ばしていくかは、本当に学ぶべき点のひとつです!
後半の講習ではフルピッチサイズを完備した室内練習場で全て行いました。人工芝は最高でした。イギリス特有の天候にも左右されず、思いっきりプレーできます。
4日間、講義→実技→講義→実技、を繰り返し、一通りのテーマを学びます。
本来のUEFA Bライセンス講習では半年かけて学んでいくものを一気に駆け抜けていきますので、本来の講習よりも広く浅い内容になってしまうかとは思います。
ですが、インスタラクターは丁寧に僕らの質問にも答えてくれますし、何よりも短期間でこのレベルの内容を学べる機会ということが、このライセンスの最大のメリットだとおもいます。
リフレッシュは地元ユースチーム施設見学、チャンピオンシップ、U21プレミアリーグ観戦など
リフレッシュも含めて中日には、
午前:Wolves Academy 施設見学をしました。ウルブスは、ユース育成で定評があります。
午後:Birmingham City FC vs Sheffield Wednesday FC チャンピオンシップ観戦。プレミアリーグの一つ下のディビジョンで二部のゲームです。
上の写真の選手、ご存知でしょうか?アイルランド出身の?そう、ロビーキーンです。
2部とは思えない、素晴らしいスタジアムと筆者。ちなみに今はすっきり、短髪です。
夜には、U21プレミアリーグ観戦し、その後は分析しました。
これだけ過密ですと、もはやリフレッシュとは言えないかもしれませんが。。
ただ、このようなプランが用意されているのは、このライセンス講習の大きなメリットではないかと思います。
イギリスのフットボールの奥の部分まで触れることのできる機会というものはなかなかないですからね!
さて、U21プレミアリーグ観戦中は下のシートを使って選手を分析です。
それを元に試合後には受講生同士でディスカス!
どの選手のどのような動きがあって試合が動いたのか。どのようなプレーが多く、何が試合を動かす要因になったのか、などなど。
監督として、選手のプレーを分析し、次の試合に向けてどのようなトレーニングを行なっていくか。この能力は非常に重要です。
それを国が違う指導者と話すことができたのは非常に有意義な時間でした。
ファイナルアセスメント(最終試験)
翌日、残りのテーマを学んだ後、ついに最終実技試験のテーマが与えられます。
この試験は前回と違い30分間で、
1)セッションの説明、2)セッション、3)フィードバックを行います。
そしてさらに大きな違いは、選手役が僕ら受講生ではなく、実際にプロを目指す選手達を指導します。
選手たちは、U17でナイキアカデミーの候補生。20名ほどがこの施設に1ヶ月ほど滞在し、ナイキアカデミーの選手となるためのセレクションを受ける一環で僕らの受講生役を引き受けてくれていました。
そして僕に与えられたセッションは
“Coach a team to Attack down the flanks”
簡単にいうと、”サイドからの攻撃”です。
受講生の中には同じテーマを行う人もいたので、協力してプランを考えている人もいましたが、僕のテーマは一人。
そして、このテーマはそれまでやっていません!
教科書を広げ、近いセッションを参考に自分で指導ポイント、セッションの人数や形式等を一晩で決める必要がありました。
自分一人だけの考えでは見落としてしまっているところもあるかと思い、受講生や知り合いのコーチにも意見を求めながら、なんとかできあがってものがこちら。
左のページまでが僕のセッションプランです。相変わらず見にくくて申し訳ないですが
いざ、最終試験!!
その場で初めて会う選手たちに指導をする。しかも英語で。
こんなに緊張し、プレッシャーのかかった試験は今までに体験したことはありませんでした。当日の朝、セッションの順番が決まります。
今回の試験は一人ずつでセッション時間が長いことと、プレーヤーの疲れも考慮し、2日間に分けて行うことは事前に決まっていました。
そして順番を確認すると、、、
まさかの2日目組へ。
緊張して寝れなかった時間を返して欲しかったです。
ということで、ファイナル1日目は他の人のセッションを学ぶことに!
さすが、ナイキアカデミー候補生だけあり、レベルが高く、彼らもこのチャンスを逃すまい!と真剣に取り組んでいました。
そんな中、上から偉そうに見ていたら、
若いし、でかいんだから、一緒にやりなさい!ということになり、疲れてきている選手たちと交代でセッションに参加することに。。。
思いっきり、楽しんでプレーしました!
U17といえども、たしかな技術と、そして何よりもスピード・パワーには驚きました!練習ですが、彼らにとってはアピールする真剣の場、手を抜くことのない本気の中に久しぶりに入ることができ、フットボールの楽しさを再確認できました!
練習に参加していると、ちゃっかり次の年のパンフに載ってました。
そして、迎えた2日目。
出番直前の緊張している姿を撮られていました。
さぁ、いざ開始!!!
撮られていることなんて忘れるくらい必死でした!
ファイナルではそれぞれのセッションを全て録画し、DVD にしてくれます。そして、セッション後にはすぐに手元へやってくるスピード感。正直にいうと、自分の指導を客観的に見るのは恥ずかしいです。しかも英語で。。。
ですが、そんなことを気にしていたら何にも始まりません!
思い切り、楽しむのみ!!!
ですが、途中でパプニング。指導チームのFW の一人が英語がわからなーい。フランス語しか理解できない模様。
上の写真は違う選手に英語をフランス語に通訳してもらっているところがたまたま写っています。
その後はなんとか、無事にセッションは終了!
正直、LEVEL 2の時ほどの手応えもなく、自分でももっとやれた。と感じました。セッション後は、全員で記念撮影!
その夜、担当してもらったインストラクターとセッションのフィードバック。その評価シートがこちら。
やはり、全てはパスできていませんでした。
残念ながら、UEFA Aライセンスを受講するチャンスを得れる推薦資格を取ることはできませんでしたが、この講義を通じて本当に多くのことを学ぶことができました。
インストラクターからのアドバイスとしては「自分のDVDを見て、また勉強しよう。勉強して、成長して、選手たちにもっとよい指導ができるように、努力を続けよう。」と言葉をいただきました。
まさしく、その通りでライセンスを取ったから終わりではないのです。
うまくいかなかったこと、いったことを含めてこの先、僕が指導する選手達に還元するための講習です!
前向きに捉え、この先も勉強あるのみ!
閉講式はスーツにて
フィードバックが終わった後は、それまでのジャージ姿からは一転、スーツに着替えて閉講式です。
Tonyの挨拶後、これまでを振り返るスライドショーが流れます。
そしてライセンス授与!
無事にライセンス、取得できました!!!
その後は僕ら受講生からインストラクターへのお礼のプレゼント!サプライズで用意していました!
英語力では劣っていましたが、存在感でなんとかなったのか、なぜか代表してプレゼントを渡す係りの一員に!僕にとってもサプライズでした。
最後はみんなで楽しくこれまでを振り返りながら食事。
インターナショナルライセンスを受講して
今回、このように記事にしていくときには16日間のことはすごく長く感じました。
ですが、実際には本当にあっという間に1日1日が過ぎていき、時間の感覚がなくなるほど、忙しく、それだけ充実していたのだと思います。
英語力はもちろん、世界各国のフットボールに対する意見が学べ、母国イギリスの素晴らしい施設でフットボールのことだけを考えて生活できる日々。
そして何よりも、ここでは指導法だけでなく、人種や国境を超えて多くの人と関わることのできるスポーツの魅力・素晴らしさを学びました。
国に戻ってしまえば、なかなか会うことは難しいですが、いつか、またどこかで、出会った人達とフットボールの話をすることができたら最高です。
全3回、かなり長い記事になってしまいましたが、それだけ充実した内容であったということでご容赦ください。
まだまだ、書ききれていないこともたくさんあります!興味のある方は、コメント頂ければお答えします。
長々と、ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
完
TORU
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