インタビュー: イギリス下部リーグで日本人選手が活躍するためには

ロンドンからこんにちは。
FOOTBALL AT UK編集長の竹山トモです。

今日は、2014年6月〜9月末までの3ヶ月間イギリスでサッカー選手として留学していた轡田 葵左(くつわだ きさ)選手(以下:Kisa)にフォーカスを当てながら、イングランドリーグのレベルや様子をお伝えします。さらに、キサ選手へのインタビューを通じて、留学を経験して得たこと、日本人選手がヨーロッパで活躍するための鍵となることなども探っています。

S__2244720ペッカムライのエルラード監督とKisa選手

選手としての目標設定をして渡英
Kisa選手は、アルビレックスから星稜高校に進学し、1年間地元のクラブチームでプレーして渡英しました。 留学生活を振り返りながら行った今回のインタビューでの最初の質問、「なぜイギリスで3ヶ月間プレーすることを決めたの?」と聞くと、とてもはっきりした答えが返ってきました。

Kisa: 僕自身、ゲームの流れの中で‘‘いい判断ができない選手’‘だとおもっていました。ワンタッチプレーができない、ボールに触れないとずるずると下がってしまう。外から見たら、日本のチームでよく見かける調子にのったプレーヤーに見えていたかもしれません。いろんな人から指摘されていましたし、自分でも改善すべきだとわかっていました。日本でもよくプレミアリーグの試合を観ていたので、縦に早いゲームの流れの中で、自分が身につける裏に抜ける動きや勝負をしかける動きが身につけたいなとおもっていました。

FOOT AT UK: 留学での具体的な目標設定がゲームのなかで「うらにぬける動き」だったんですね。イギリスの下部リーグでの戦いかたは直線的かつフィジカル中心のサッカーですが、3ヶ月のトレーニングや試合でそれをどのように学ぼうとしましたか?

Kisa: パスをたくさん回して攻撃するよりも、ゴールに直線的なほうが、効率がいいときがあるじゃないですか。他の選手が試合中に判断するときも、ゴールに直結するプレーが多かったと思います。もちろん面白くないときもありましたけど、そのなかで2トップ、3トップ、サイドの選手として試合にでたときは、必ずウラを狙っていました。ゴールに向かう意識が共通しているので、MFやDFの選手でそのパスを狙っている選手がいたことは、とても大きかったですね。

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試合で目立つために必要なこと
FOOT AT UK: プレシーズンの試合や、リーグ戦で10試合以上に出場していましたが、日本人が選手として活躍するために何が必要だと感じましたか?結果はもちろんですが、その結果をだすためにやるべきことをあげるとしたらなにが必要でしょうか?

Kisa: まず試合や練習にいくと、他の選手たちの体がめちゃくちゃでかいのですが、それに萎縮してはだめです。あとは、英語の問題はもちろんありますが練習でも試合でもとにかく伝えないとだめです。言い方はよくないですが、よくキレていましたね。つたない英語だけど、単語でも思ったことを伝える。それで、ボールを受けてしっかりとプレーできることを示せれば、またパスがきます。

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英語は、プレーする上でも、とにかく大事!
FOOT AT UK: コミュニケーションの話がでましたが、選手としてどれくらい言葉で伝えることが大事だと感じましたか?

Kisa: とにかく大事です!つたない単語を繋げていただけかもしれないですけど、もっと言い方をいろいろ知っていたらと、もっといいプレーできるのではないかと痛感しました。地下鉄内の無料でよめるMetroの新聞をもらって、なんでも読んで単語を調べていました。サッカーの記事を読んだり、スコットランドはなんで独立するのか?電子辞書とともに、あー!そういう意味かと。

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イギリス•ロンドンでの留学生活
FOOT AT UK: 最後にベスト3の思い出をどうぞ。

Kisa: やっぱりサッカーするために来たので、1番はプレーしたこと。この経験を必ずつ次に活かしたいです。2番目は、Capital One Cupのミルウォールvsサウサンプトンですね。吉田選手を目当てにいったのですが、ミルウォールのファンが熱くて、試合もバチバチやりあう試合で本当におもしろかったです。あーゆう、観ている方も熱くなる試合が好きなんです。3位は、こちらで活動しているロンドンのチームで子供たちを一緒に指導できたことです。


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帰国前の最終戦、Kisaが所属していたリングフィールド(10部)のホーム戦。

相手チームのファンも車でかけつけて、スタンドつきの会場には150人以上が集まります。 マッチデープログラムも販売されており、ゲートにはクラブチームのチェアマン自身が立ち、チケットを販売。ピッチ脇で、パイ、ホットドッグ、ビール、紅茶などを飲みながら、やってくる仲間たちとそれぞれに時間を過ごします。

ここ2試合連続得点中のKisaは監督ディクシーからの期待も高く、モチベーションも高まっていました。サイドラインで見ているとバチバチぶつかる音が聞こえます。

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Kisaの試合を数試合観戦したFA公認代理人の宮原氏(ロンドン在住)は次のように彼のプレーを分析しました。

「Kisaはストライカーとしてはリーチが長くありません。その分、重心をなるべく低く、また相手の長い足に引っかからないように懐深くキープする技術が非常に高くなったと思います。ワンタッチプレーや、切り返す角度の深さを更に鋭くするなど多々工夫はあると思います。ストライカーという結果重視のポジション、異国の地、違うフットボール文化の中で適応し実践して行く事は、フットボールのうまさは勿論ですが、頭脳・英語の理解力・戦術理解力・性格が非常に大事になってきます。Kisaはぐいぐい行ける感で、頭も良いのですっかりなじんでいました。自分にも厳しくトレーニングしているのでプロ意識は非常に高いです。一人で空いた時間にはイメージトレーニングを頭の中で2試合出来たりするらしいです笑。最後の試合では点を決める事が出来なかったけど、イングランドで少しでも成長して日本に戻ってくれたら最高です。」

編集後記:
自分で目標を決めて、それに挑むこと。いまいる環境のなかでベストをつくすこと。サッカー選手として上に登っていく為には、当たり前のことでしょう。

彼がロンドンで挑戦した舞台はプロのような華やかな世界ではないし、またKisaが体感したことを日本に戻ってどのように還元できるかは未知です。しかしながら、サッカーを取り巻く環境でさらに上を目指そうと没頭し、自分を追い込んでいたのは事実でありました。今後の活躍を願います!

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著者プロフィール

竹山友陽
竹山友陽
2009年より在英。イギリスサッカー留学マガジンFOOTBALL@UK編集長。イギリスの大学でスポーツマネージメント学部卒業。ロンドンスポニチ通信員。サッカーダイジェスト執筆など。西ロンドンにてサムライアカデミー運営。