イギリスにて「サッカー選手として生活すること」(しかもGKとして)を目標にして、2年間のワーキングホリデーの間にイングランドの7部と8部でプレーした玉井リョウさん。
2015年の冬の移籍で、クリスタル・パレスがFWケシ・アンダーソン(19)選手のシンデレラストーリーで話題になったイングランド8部リーグ。サザンリーグ・ディビジョン1・セントラル(8部相当)のバートン・ローバーズからの移籍でした。
リョウさんがワーホリの期間である二年間で実際に体験したフットボールの下部リーグとはどんなものであったのでしょうか?(全3回)
第1回はこちらから!
第2回は、イングランドフットボールと日本サッカーのピッチ上やトレーニングの違いなどを綴ってくれました。
一言で言えば、泥臭いがキーワード。皆さんが想像するようなプレミアリーグのような美しいレベルではないですが、激しさや勝負への執念が凝縮されているので、感じ取ってください!
日本サッカーとイギリスFootball、
ピッチ内での違い
プレー環境が違うとはいったいどういうことか?
まずイギリスと日本では気候が違います。
イギリスの冬は雨が非常に多く、日照時間も短いためピッチは常にぬかるんだ状態でプレーします、真冬になると芝が凍ることも。
このような気候はNon-League(セミプロ)のフットボールスタイルに大きな影響を与えています。だって、きれいにパスを繋ぎにくいんですから。
凍った芝
スパイクはほとんどの選手が取り替え式
チームメイトのマイケル(CB)はスパイクのポイントを長いラグビー用のもをつけて改造してました
ロングボールを多用、ポゼッションの放棄
このようなピッチ状況では自陣からパスを繋ぐのは非常にリスクが高く、よってDFやGKがボールを持ったらすぐさま前線のボールの収まる選手をめがけてロングボールを放り込むサッカーになっていきます。
ここ最近、日本だとなかなか見ることができないプレースタイルですが、こちらの下部リーグでは正攻法です。
僕が2年目にいたクラブはそれがとても顕著で、試合前に監督からの指示で「もしお前がボールを持ったとき近くにパスをしたらクビにする」とまで言われました。
練習ではパントキックをとにかく高く遠くに、かつ相手のヘディングの得意な選手を外して狙うトレーニングもしました。
相手のロングボールをことごとく跳ね返してくれたスタンリー
(いつも車で送ってくれた、一番世話になったチームメイト)
セットプレー の重要性を実感BBCのフリーキック特集からの転載。
シーズン中の練習と試合前のミーティングで一番時間を割くのがセットプレー。
試合の日にスタジアムのロッカールームに入ると、ホワイトボードにはディフェンディングコーナー・フリーキック、アタッキングコーナー・フリーキック、カベ、キッカー、全ての選手の配置が記されています。
ロングボールを多用するスタイルの場合、ボールが静止していてプレッシャーがなく正確なボールをゴール前に送り込めるセットプレーはお互いにとって大きなチャンスで、またピンチでもあるのです。
僕はどんなトレーニングしていたか?
キーパーなので、キーパーの練習内容も少しお伝えします。
ボールを一回でつかむ、
ボールの正面に足を運ぶということに重点を置いていました。
特に足を運ぶ=ステッピングは何度も反復した覚えがあります。
ちょうど同じようなトレーニングをしてる動画があったのでよかったら見てください。
Football league1、3部にあたるWalsall FCのトレーニングです。
たまたまチームメイトのキーパーがこのクラブに所属していましたので、練習は似ていたのかもしれません。
テーマごとに専門家がやってくるトレーニング
ピッチ内での話とは少し離れてしまいますが・・・
冬場になると雨や雪でピッチが使えなくなりトレーニングが外で行えません、そんな時にはスタジアムの二階にあるバーのホールの机をどかして室内サーキットトレーニングを行います。
パーティ会場がトレーニングルームへと変わります。
・スピニングSpinning
エアロバイクと似たような自転車型のマシーンでペダルの重さはレバーのようなもので調節します、それを音楽に合わせながら漕ぎ、徐々に負荷を上げていきます。
・ボクササイズ
ペアでグローブとミットをはめてミット打ち!
最後には手が上がらなくなります。
・ヨガ
様々なポーズを皆でそろって行います。
タトゥーの入ったゴリゴリのやつがポーズをとると笑いが起きます。
そして驚いたのが、
これらのトレーニングの専門のインストラクターがわざわざ来るということ。
サッカーのトレーニング以外の重要性
日本では、サッカーが上達したいのであれば常にサッカーのことだけを考え、サッカーをプレーすることだけで上達できるというような考えは少なくはないと思います。
しかしサッカーとは違う指導者のもとで、今までしたことのない動きや、普段使わない体の部位を使うことによって、プレーの幅・選択が広がり無理のきく身体づくりをすることができます。
身体能力が高いなーと思ったチームメイトが、実はオフシーズンにはラグビー選手をしてたり、競泳をやっていたりというのを知りました。
実感ベースですが、これは取り入れてもいいのではないか思っていました。
さて、次回は最終回です。
ピッチ上で実際に使っていた英語、
1ヶ月の給与はどれくらいか?
そして2年間の振り返っていきますのでご期待あれ!!
玉井リョウ
Cheers mate! (野郎ども、乾杯だ!)
編集後記
文章だけ読むと、ロングボール多用とか泥臭いパワープレーとか、いまの流行からは完全に取り残されている感じに見えてしまいますが、実際にリョウさんの試合をスタジアムまで見に行った感想は、90分間熱かったす。そして面白かった。
チャンスはあるし、プレーに意図はあるし、そして激しく戦うからこそ生まれる物語がピッチ上にはありました。
「パスを回しているだけで、ゴールに迫られないのでポゼッションなんかくだらない」という言い分もよくわかります。
世界中、みんな違ったサッカースタイルでやってぶつかったらいいのではないかとぼくは勝手に思っています。
第1回はこちら(ガムシャラに挑んだチーム探し)
第3回はこちら(サッカー単語集、給与は?)